オックスフォード通信(360/05)Queue考

イギリス人は行列が好きです

好きです、とうのは変な言い方ですが、何かあるとまず行列を作り、しかも静かに文句を言わず並びます。得意と言った方がいいかもしれません。

オックスフォードからロンドンへ行くには、最終的に、バス、しかも (Oxford) Tubeバス(X90よりも格段に安く £15で往復できる)で決まり、と思っていました。24時間走っているし、バスの中はまずまず快適です。

イギリス滞在も残り僅かとなってきましたので、本日は、資本論を書いたカールマルクスのお墓がロンドンにあるというので、これは行っておかなくてはと思い、朝一でTubeバスに乗ってロンドンに出かけています。マルクスについては機会があったから書かせて頂きたいと思います。

問題は帰りのバスです。折角なので(これが多い)いつものMarble Archからではなく、そのひとつ先のNotting Hill Gateから乗ろうと考えました。これは、乗る前にパブで一杯ビールを飲もうと思ったからです。Marble Archは名前の通り大理石の凱旋門がハイドパークの横にあるところですので、残念ながら回りに手頃なパブがありません。

いい感じのパブをNotting Hill Gateのバス停近くで見つけて、さあそろそろ帰ろうと思ったのが午後6時くらいです。すでに3-4人並んでいます。金曜日の夕方ということもあり、人出が他の曜日よりは多いのか、また時間的にも混む時間帯なのでしょうか、なかなかバスが来ません。

行列(Queue)は徐々に伸びていきます。しかし誰も文句をいうでもなくジッと列の中で立って待っています。Tubeバスは15-20分に1本と謳われていますので、そろそろ来る頃なのですが30分経ってもまだ来ません。でも誰も文句も言わずジッと並んでいます。若干私の後の2名の女性は少しブツブツ言っています。ようやくバスが来たのですが「Sorry, coach is full」との文字が。

はじめて見ました。ひょっとしたらいつもMarble Archから乗っていましたので、この表示はいくつかのバス停では出されていたのかも。

日本なら「エー」とかため息が漏れると思うのですが、文句を言う人もいません。まあ、仕方ないね、くらいです。ただ先ほどの2名の女性は頭がきれるのか、このままでは次のバスも満員で乗れないかもしれないと思ったのでしょう(実際、次のバスは5名しか乗せてもらえませんでした)、反対側のビクトリア駅行きのバスが到着すると小走りで道を横断して(危ない!)運転手に交渉して無料でバスに乗り込んでいきました(たぶんです、反対側からその様子を見ていました)。

確かにそうする方が賢いと思ったのですが、このQueue文化ではそれはCheating=ずるいことのように思いました。その二人は行列では私の後だったのですが、そのバスでMarble Arch に先回りすることによって、次のバスでは2名分の座席が足りなくなることになります(事実そうなりました)。

面白いので回りを観察していましたが、それについて文句を言う人も、それについていく人も誰もいませんでした。代わりに、私の前のカップル(私が来たときには既に並んでいた)はバスに乗れなかったことで発想を変えたのか、Queueを離れ、向かいのイタリアンのレストランに入っていきました。

更に、40分くらい経って次のバスが来たのですが、5名だけ乗れるとのこと。どうするか見ていたのですが、ここでは案外たまたまバスの乗降口の前にいた人はスルスルと乗り込んでいきます。それは違うだろうと思い、前から並んでいた女性2名に順番をゆずり、幸運にも私の番が来たのでバスの乗り込むことができました。

そのスルスルとというところでも、大声で誰かが文句を言ったりするでもなく、不満の声があがるわけでもありません。日本ならそれはズルイ!とつかみかかる所までは行かなくても叫んだり、近くの人とボソボソと言ったりすることでしょう。

淡泊なのかそれとも達観しているのか、それとも大方上手くいっていれば細かいことはいいとしようとするのか、Brexitまであと1週間となっても誰もわめいたり(MP=国会議員はどこの国でも別です)せず事の行方を見守っているように見えます。

不満というものを述べることはこの国ではあり得ないことなのでしょうか。日本とは異なる風景が広がっています。

(2019.3.22)


★今回の教訓:Queueは間違いなくイギリス文化を象徴するキーワード。誰か論文を書いていないかな。少なくともイギリス人はあまり焦ったりイライラしたりはしないようだ。Queueを作ることが合理的な問題の解決方法ということなのだろう。オックスフォードに帰ってきて市内バスに乗ろうとすると長いQueueが。列の最後はどこかと探すと女性が少し離れて立っていた。Are you in Queue? Yes, of course. Queueを飛ばさなくてよかった。

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