オックスフォード通信(233)バイリンガルキッズに必要な年数

ESL環境における子ども達の英語能力の発達についてのセミナーに参加してきました

応用言語学の中でもピンポイントのセミナーはなかなかないのですが、月曜日夕刻の教育学部セミナーはLeeds大学のC先生のまさに聞きたいお話でした。

多様な第一言語 (Home Language) 母語とする子ども達を対象にした大規模な調査研究で、英語能力もSentence Repetitionなど多くのテストを活用しながら、第二言語としての英語の発達に寄与するのは何なのかという壮大なResearch Questionに答える興味深い研究内容でした。

結果として、どれだけ英語を話したかということは英語能力を占う結果にはなりませんでした。英語を早く習得させるために自宅でHome Languageを使うのを控え英語を使うようにしがちだと思いますが、それは関係ナイトの結果でした。では、何が英語能力の発達に寄与するかというと、それは累積的にどれだけ英語に触れたのか(exposure)その期間ということでした。実にそれは42 monthsということですので、3年半ということになります。

アメリカの応用言語学者クラッシェンが提唱した有名なインプット仮説がありますが、まさにその仮説に沿う結果と言ってもいいかもしれません。

ただ、気になるその3年半という期間が時間に直すとどのくらいの時間になるのかということについては、時間数を正確に調査している訳ではないと言うことで換算はできないということでした。
4、5才の子どもと小学生、中学生などの違い、英語が街にあふれている環境と教室やテレビ・インターネットに英語の使用が基本的に限られている日本のような環境との違いはありますが、このように第二言語習得に影響を与えるのは、インプットかアウトプットか(インターラクションという議論はありませんでしたが)という議論は重要だと思います。

それ以上にどのくらいの期間が必要なのかという年数を概算することはある意味では応用言語学の使命に合っていると思います。

累積ということですので、もしこれを今後時間数に直せばどのくらいの「時間」英語に触れれば英語の基本的能力が身につくのかという謎への回答が今後得られる基礎になると思います。

時間なのか、開始時期なのか、インプットなのか、アウトプットなのか、その組み合わせなのか。移民を対象としたこれまでの研究では移民してきた時期(Age of Onset)が重要な意味を持つことが示唆されています。

日本人は従来6年間も英語を学んできたのにと言われますが、このC先生の研究と異なり毎日英語にどっぷり浸かっている(language bath)ではなくちびちび (drip feed)で英語の授業があったのみです。特に、Exposureとなると1000時間どころか、その1/10もないのではないでしょうか。その意味でも学習年齢や環境を超え、日本人の英語能力を考える際この研究重要な意味を持つものと思います。

(2018.11.15)

★今回の教訓:Cumulative exposure to English、一度これまで何時間英語に触れたのか考えてみるといいだろう。

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