オックスフォード通信(165)炎のランナー (A chariots of fire) と大坂なおみ

本日、土曜日夕刻はBBC Promsの最終夜 (BBC 2, 1)とUSオープン女子決勝(Amazon Prime)がほぼ同時刻に生放送されていました

BBC Promsは一度ロイヤルとアルバートホールに見に行った事もあり(通信145参照)今日の最終回を楽しみにしていました。Proms自体リラックスした雰囲気ですが、最終夜は最初から各国の国旗が舞うお祭り気分のコンサートになっていました。指揮者のSir Adrews Davisの挨拶やコメントにも観客と一体感があり見ていて楽しいものでした。Promsは日本でもBS-NHKで1−2度見たことがあるのですが、イギリスで生で見ると一段と臨場感があります。

特に、ハイライトの Pomps and Circumstanceエルガー作曲、威風堂々)は良かったです。普通なら極評するところだが今晩は良かったと指揮者のDavisが冗談ぽく言いながらもう一度アンコールとして演奏しました。

そして、そのあとの Jerusalem。38年前、20歳の頃、映画『炎のランナー』の最後にこの聖歌が教会で歌われるのを見て何故か心を揺り動かされたことを昨日のことのように思い出します。今回の在外研究でカナダではなくオランダでもなくイギリスを選んだのはまさにこの曲をもう一度イギリスで聞いて見たいと思ったことをが潜在意識にあったと思います。

この Jerusalem の最後で a chariots of fire(炎のランナー)の一節が出てきます。38年前何に感動したのか、それは情熱を持って人生を生きていく姿勢だったと思います。その曲がPromsの最後で歌われることに、イギリス人がこの曲を大切にしていることに共感を覚えます。

と、同時に。USオープンでの大坂なおみの快挙。昨日の錦織圭のベスト4とあわせて素晴らしい試合を見せてもらったと思います。錦織は準決勝で負けてしまいましたが、二人ともテニスを楽しんでいるところがいいと思いました。特に準々決勝でのClic戦では、タイブレークを取ることになった錦織のパッシングショットに思わずClic が笑っていたのが印象的でした。

テニスはビジネスになっているし、賞金も掛かっていますが、大阪にしても錦織にしてもテニスが好きでプレイを楽しんでいるところが節々に見ることができました。恐らく人生も同じことなんだと思います。勝とうとするマインドセットを楽しもうとするものに変えるときに思わぬ力が出るのだと思います。ひとが思うほど他人のことには興味はないもので、勝っても負けても、また新しい出来事に人の関心は移って行くものです。

ならば誰かのために頑張って勝とうとか思うよりも、自分が楽しんでプレイをする方がより人生が豊かになるのだと思います。

肩に力が入りがちな中で錦織も大阪も楽しいプレイを見せてくれたと思います。

錦織は準決勝で敗退しましたが、テニス人生においてはすでに勝利していていると思います。大学生の皆さんにも同じことが言えるのではないでしょうか。大学に入った時点ですでに人生に勝利していると。
人生を楽しむことと Chariots of Fire。相反するように見えますが根底は同じだと思います。人生を楽しもうと思わないと情熱は湧いてきません。誰かに勝とうとかそのような気持ちでは長続きしないと思います。

PS. セリーナウイリアムズの審判への執拗な抗議には辟易とするものでした。それを煽るアメリカの観客もどうかと思います。ウインブルドンではそうはならないだろうと思います。試合をみる観客の態度も含め自由をはき違えている人が多いように思いました。

PS2. 錦織の試合のコメンテーターはあのジミー・コナーズで声を聞けて嬉しかったのですが、しゃべりすぎで、錦織がサーブやプレイをしている間も喋り通しの異様な中継だった。名選手が名コメンテーターとは限らないのだろうか。コナーズが選手時代のビデオで、"You may not like me, but I like you." と言っているものがあったがコナーズファンが減らないように気をつけた方がいいと思う。

(2018.9.8)

★今回の教訓:帰国まで200日。更にイギリスを楽しみたいと思う。

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