オックスフォード通信(335/30)オックスフォードが世界一である理由(12)

何度目かになりますがクライストチャーチカレッジを訪問しました

来訪者がある度にこのクライストチャーチカレッジをご案内してきましたが(恐らくこれが最後かも)、その中で必ず行くのがダイニングルームです。映画ハリーポッターの食堂のモデルになったところで、一歩足を踏み入れるとハリーポッターの世界に入ったような、時空間を超える感覚に陥ります。

クライストチャーチカレッジのダイニングでは食事をしたことがないのですが、Keble College, Waddahm College, Linacre College, Kellog Collegeでは朝食や昼食、夕食を頂く経験が何度かありました。昼食は外で食べることがあっても、朝夕をこのカレッジで食べる特に学部生は恵まれていると思います。カレッジの中に住んでいることが(少し離れたところにドーミトリーを持っているカレッジも多くあります)学業に直結していると思います。

日本語でも寝食を共にするということばがありますが、特にご飯を一緒に食べる意味は大きいと思います。ただ食べるだけでなく、食べながらいろいろな話をします。それが日常的にあるわけです。

日本の大学でもコンパをすると(最近では飲み会ということもありますがあまりこのこの言葉は好きではありません)一気に学生同士の中が良くなるのを感じます。教員でもそうです。これはお酒が入っていなくても、ご飯を食べるというところから変な緊張感が薄れるからだと思います。また食べることについてはそれぞれが面白い経験やクセを持っているので話すとっかかりが何かあるのが特徴だと思います。

私の所属する大学の学科でも3年前から新入生オリエンテーションを宿泊型に変えて、一泊二日で京都市内の宿に泊まって研修を行ってきました。それが学業にどう直結したのかというと数字ではまだ表しにくいところがあるのですが、学生同士が自然といろいろな話をする機会を多く持っているのを目撃してきました。それ以上に笑顔をよく目にします。

食べながらコミュニケーションする、これは洋の東西を問わず、真理だと思います。オックスフォードも正直なところ面倒くさいことをやっていると思いますが、かたくなにこの伝統を守っているところに世界一の秘訣があるのだと思います。

学びはとってつけたような議論の上に成り立つのではなくて、ご飯を一緒に食べたり、飲んだりしながら、それぞれの生活体験の上に少しずつ根付いてくるものではないかと思います。映画マトリックスのような知識の注入はあり得ないのでしょう。

面倒くさいことが実は大事なのだと、クライストチャーチカレッジを散策しながら感じていました。

(2019.2.25)

 

★今回の教訓:効率主義を100%否定するわけではないが、回り道のようなことが実は大事なのだと思う。日本で近年流行のアクティブラーニングも実際、学生を巻き込んだ議論という面倒な作業が中心だ。でも議論を巻き起こすための方法を教室内だけで探しても難しいかもしれない。オックスフォードのように寝食を共にすることには実は大事な意味が含まれている。

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