オックスフォード通信(277/88)イギリス再入国の難:BRP

パリからは華麗にユーロスターで帰国の予定でした

ユーロスターの発着するパリ北駅(Gare Nord)に到着したのはユーロスター発車の1時間前。既に多くの人の列が。その時点で15:13発の電車に間に合わないのではないかというイヤな予感が。

パリ到着からこのタイプの直感はいろいろと当たっています

その1)パリ到着した日は快晴で凱旋門に登ると(階段なので本当に登頂という感じ)エッフェル塔などパリ市内を一望することができました。きっと夜景も綺麗だと思ったのですが、その日は疲れていたので、再度登る気にもなれず、最終日にしようということになりました。でもパリでこんなに天気がいいのは珍しいのでその日に登っておかなくてはと思ったのですが、案の定、最終日のみならず残りの2日間は曇天で、エッフェル塔のてっぺんも霧に隠れるくらいでした。しんどくても天気のいい日に登っておかなくてはなりません。

その2)天気は悪いが最終日に凱旋門の上からシャンゼリゼ通りを眺めようと、閉門時間が10:30なのでそれに間に合うように行こうとしていました。私は走った方がいいのではと直感的に思ったのですが、慌てる必要はないとの声に普通に歩いて行ったところ、10時閉門で10:30最終下門ということらしく凱旋門の入り口に着いたのが10:02。タッチの差でアウト、夜景をみることができませんでした。丁度、片付けをしているところが見えたので本当は1分少しの差だったと思います。

さて、ユーロスターに話を戻すと、北駅の中でまず大行列に並び、最初にたどり着いたのが、フランス国境です。ここでパスポートを見せて無事フランスを出国することになります。やれやれと思っていたら、今度はイギリスのパスポートコントロール。フランスに比べて明らかに進度が遅い。フランスのパスポートコントロールが4-5名だったのに対して、イギリスは3名。もちろん、出国と入国の差はあるでしょうが、どうも発車に間に合いそうにない気配。その時、フランス語・英語の放送で15:13のユーロスター、最後のお客さんが乗り込むまで発車することはありません、という愛にあふれた放送が。しかも2度も。これで電車に乗れると思ったのですが。さて、私の番がやって来ました。空港の税関よりもはるかに多くの質問が。イギリスで何をしているのか、何ヶ月住んでいるのか、いつまでいるのか、専門は何かなどなど。そして最後になぜBRP (Biometric residence permits = 居住許可証) を持っていないのかという質問が。

はて、BRP は必要なの?

今回の旅は実はいろいろと構えて臨みました。バルセロナは世界の最高峰を争うくらいスリが多い。パリもしかり。絶対にiPhoneを出してはいけない(半分ウソ)。なので不要だと思われるものはすべて「置いてゆく」ことにしました。クレジットカードは日本のものを1点、その他は空港のラウンジカード、そして帰りのロンドンで乗るはずの地下鉄のオイスターカード。以上3点のみです。これにiPhoneがあれば十分のはずでした。BRPはパスポートがあるのであえて要らないだろうと必要なものにカウントせず出発しました。

事実、ヒースロー空港からイギリスを出国する際にも何ら問題がありませんでした(もっと振り返ると秋にドイツに旅行した際、イギリスに再入国する際にはパスポートだけでOKでした)。ところが、パリ北駅に到着した際に、提示するものとして「身分証明書とパスポート」と怪しい掲示があったのです。さて、質問に戻ると、持ってきていないというと、それまでの笑顔が(3人の中で一番ニコヤカそうな顔立ちでした)急に曇り、「どこにあるの?」「自宅のフラットに忘れてきた」「なぜ忘れてきた?」「要ると思わなかった」「今度から気をつけます」「今度はないよ」と、ここで話が終わると思ったのですが、目の前で何やら定型の書類にチェックをいれたり私の名前を書き入れたりと作業が始まりました。これはどこかで見たことのあるような風景だなと思ってみていたら、そうイギリスに来た当初、銀行口座を開設しようと思ってバークレー銀行ですったもんだがあった際に、銀行員が手書きでコンピュータ画面をメモしていたことを思い出しました。イギリスは何か、トラブルがあった際には、究極の手書きで何かを作業するのです。

とてもイヤな予感が。更にその途中で係員が交替、と思いきや、私のパスポート一式を持ってブースから出てくるではないですか。そしてこちらへ来いと。えええ、居住許可証を忘れたことってそんない悪いことなの?だったらどこからに大きく書いておいて欲しいと思いますね。

別室の前で待て、とのこと。既にそこにはトラブルをかかえた2組(人)の皆さんが。そして10分おきくらいに係員がやって来て最初に1名は振り出しに戻るように出発ゲートと反対方向へ。2人目は無事だったようで、といってもパスポートにA4の分厚い書類が挟んであるのを見ました。私はまだ「全員が乗るまで出発しない」というアナウンスを信じながらイライラして待っていました。

私はこのようなときにイライラしない人の気持ちが分かりません。そりゃイライラしたり立って待っていても何も状況は変わらないかもしれませんが、イライラ⇄イライラしない、という図式ではなくて、こうすればこうなるという解決策を考えるのが状況を改善する方法だと思います。このような状況でイライラしていない人をみると余計にイライラ感が募ります。イライラしないのは単に当事者意識が欠けているからなのでは?と思うわけです。

そのイライラして待つこと20分、既に時計は出発時刻よりも30分過ぎています。係員は今度だけだといいながら、何も書類も挟まないパスポートを返却し、荷物チェックに急げという。急いで荷物チェックのコンベアー(このチェックは結果的にやってますよという儀式だけでチェックしている人を見なかった!)を通り過ぎ、ホームにダッシュ、と思いきや途中にアテンダント風の女性がいたので、15:13のユーロスターは?とすがるような思いで聞いたところ、

It is gone!

と分かりやすい英語の返答が。ガッカリするよりはそりゃ流石に30分も待っていることはないよな、というあきらめの気持ちの方が大きかったです。アテンダントの女性は慣れた手つきで次のユーロスターの(なにせ30分に1本です)空き座席を確認して、ハイと次の16:13発のユーロスターの乗車券を渡してくれました。

Gatwick空港のドローン騒動から始まった旅はユーロスター乗り遅れ(というよりはBRPの不携帯)という失態で幕を閉じることになりました。持ち物には気をつけたいものです。

(2018.12.29)

★今回の教訓:日本ならこのような状況が発生する場合、何度もテレビや新聞などで注意を促すでしょうが、イギリスが異なるはすべて個人責任であるという点だ。責任のある個人が自分でその情報を集める必要がある点だ。飛行機では不要だったからユーロスターでは・・・というのではなくそれぞれ丁寧に情報を集めなくてはいけないということなのだろう。

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