オックスフォード通信(212)ヘイトクライムとソーシャルメディア

オックスフォードにはインターネット・インスティテュートがあります

ここはオックスフォード大学では比較的新しい学部で21世紀になってから創設されました。本日はソーシャルメディアヘイトクライムに関係があるのかどうかというセミナーに参加してきました。

最初に参加しようと思ったときにはまずこの場所がなかなか分かりませんでした。マップで見るとシティーセンターに非常に近いところですが、それらしき建物がありません。オックスフォード大学の公開セミナーで大変なのは本当にいろいろな場所で開催されるのでその場所になかなかたどり着かないことです。結果的にこのインターネット・インスティテュートは一見、誰かのフラットのような玄関が入り口になっていました。

他のセミナーと異なるのは会場が狭いせいか必ず事前登録が必要で入り口できちんと氏名確認がなされるところです。本日のセミナーはタイトルが示す通り、関心が高く、別室にまでテレビ中継されていました。

昼のセミナーは経済学部で台湾の大学教授、このインターネットセミナーはイギリスの Warwick大学所属ですがドイツ出身の先生です。それぞれ特徴のある英語を話されますが、英語がグローバルリンガフランカとして機能していることを実感します。

ヘイトクライムについては、ドイツにおける研究とアメリカにおける研究の2本立てになっていました。ドイツにおいてはFacebookに参加していることが、アメリカにおいてはTwitterに参加していることが、それぞれ反移民のサイトからの発信、トランプ大統領の反イスラムについての発信が実際のヘイトクライムの発生に影響を及ぼしているのかについての相関関係を利用した分析でした。ドイツにおいては相関あり、アメリカにおいては相関なしという結果ですが、結果以上にこの研究の着眼点が面白いと思いました。また、相関関係なので因果関係に言及できないところですが、ソーシャルメディアヘイトクライムを誘発しているというよりは、ヘイトクライムがあるとソーシャルメディアの発信が増える可能性があるのではないかという点も興味をそそられました。

人間の行動に関することはあらゆることが研究対象になると実感することができます。

一見、現在の私の研究に関係ないように見えるところもありますが、気づきがあるということは、氷山の下の部分か上の部分かは分かりませんが、必ず関連してくるのだと思います。

また今日は教育学部の日本人新大学院生のAさんともお話する機会がありました。入学されたところですがもうResearch Questionを決めなければとおっしゃっておられました。研究のスタートは何かと大変ですが、一方でワクワクするものです。Aさんの目も輝いていました。

(2018.10.25)

★今回の教訓:インターネットはこれからますます研究対象となることだろう。

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