オックスフォード通信(199)Causal Effect

Causal Effect、いわゆる因果関係についての(実験)心理学のセミナーに参加してきました

Causal Effectはピアソンの積率相関係と一緒によく議論される概念で、2つのものの間に相関関係があるからといって因果関係があるとは限らない、と習うと思います。そう聞くとこの2つのものは無関係のように思うかもしれませんが、そうではなくて「限らない」ということです。つまり、相関があるといってすべてのものに因果関係があるわけではないのですが(たまたま他の要因と結びついたもの同志に相関がある場合:[例] 大学入学試験になると雪が良く降る、これは入試があたかも雪を呼び込むような迷信=superstitionsですが、入試が冬に行われ、雪は冬にふる、この二つの関係セットで相関を見ているのであたかも雪と入試に関係がありそうに思ってしまいます。試しに、夏に入試をしてみてそこで雪が降れば、この2つの因果関係は証明されますがそうはならないということですね)、逆に言うと、因果関係のあるものは必ず相関があると言えます。ですから、相関関係のあるものの中で因果関係があるのはどれだ、と考えてみるといいわけです。またはそのような統計分析(例、回帰分析やパス解析)を取るわけです。

さて、本日のランチセミナーは、R先生によるものでしたが、7つの関連した実験を通して、どの刺激又は刺激がないこと(Empty Time)が学習 (広い意味でのLearning)に貢献するか実証した者でした。普段、応用言語学の分野であまり実験をしないため、実験心理学のような緻密なプランによる実験によって効果を確かめる手法がまず面白いと思いました。

質問紙による調査に頼らざるを得ないことが多いのですが、その場合、他の要因が影響している可能性を完全に排除することができず、更に質問紙自体がやや一般的なことについて聞くことが多いこと、そして何よりもそのデータが参加者自身によって回答されていることがデータの信頼性にとって問題となることがあります。

その点、今回のR先生のような反応をみる実験であると、もちろん参加者からの反応によるのですが、言語化していない(Verbal Reportでない)点がすっきりしている点です。

本日の、Contingency Learning(刺激に対する反応)を見る実験はシンプルですが、結果がハッキリとでるところが気持ちいいところです。そのなかでstreaming procedureという手法を取る中で空白の絵=Empty timeの効果を見ようとしたということですが、結果を断定するには至らないとのことです。

ただ、この因果関係を探す中で、入試と雪のような、迷信(superstition)の蒙昧を解くような作業が期待できるのが面白い所です。

関係ないですが、今回の会場となった Worcester College は奥に美しい芝生があり、新築された Sultan Nazrin Shah Centre は緑の中に映える美しいオーディトーリアムでした。

(2018.10.12)

★今回の教訓:応用言語学で実施できる実験を考えてみると面白い。R先生が最初におっしゃっておられた 記憶の研究も Learning における因果関係の研究の枠組みに含めることができるのだろう。

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