オックスフォード通信(64)Who are native English speaking teachers?

昨日の応用言語学セミナーは英語のネイティブ・スピーカーが議論の対象でした。

オックスフォード大で多くのセミナーに参加しながらもやはり一番興味を持って話を聞くことができるのが応用言語学セミナーであることは間違いありません。

オックスフォード大は近隣の大学からふんだんに講師を招きます(それだけのネームバリューと実際の資金があるのでしょう)。このセミナーの講師はバーミンガムのアストン大学の先生。Teacher Beliefの研究を中心にされているようです。話し方も聞かせる話し方で最初に近くの人と短いディスカッションをさせるあたりさすがにTeacher Educationの研究家という印象を与えます。

主としてネイティブスピーカー (NESTs: Native English Speaking Teachers)の立場から各国現地の先生LETs(Local English Teachers; 日本ではJTE、Japanese Teachers of English、どこかの学会名と同じですね)との関係について主としてインタビューデータを元にした分析結果を報告されていました。

いろいろと興味深い点がありました。

1. NESTsの定義:英語を母語としているだけでなく、各国の語学学校や招かれる小中高等学校では「白人、男性」という暗黙も前提があるようだ。逆に、「女性、有色人種」という場合特にNET枠に入れてもらえないことがある(ナイジェリアの男性の例を紹介されていました)。この部分は重要かつ深刻であるように思います。日本においてもこの傾向は特に強いように思います。アジア人で英語が母語の場合にも例えば語学学校ではNETの教員としては採用されないと思います(実際にそのような例を知っています)。ここで見えてくるのは各国におけるNETの作られたイメージして及び英語=北米や欧米といった先進国、憧れの対象というものがあると思います。一方で意図的ではないにせよ、その傾向を扇動または煽ってきたイギリスをはじめ北米諸国の責任も大きいと思います。

2. NESTsとLETsの連携:ここが議論の中心でした。NESTsに授業に丸投げされる又はその逆で部分的にしか授業に関わることができないというもの。少しびっくりしたのはNESTsがLETsが授業の構成を考えられないと思っていること。また両者に十分なコミュニケーションがない事です。この研究が重要なのはもちろん日本も含まれているのですが、調査対象が全世界であることです。この辺りがBritish Councilのプロジェクトとして実施していることの強みであると思います。

ただ、どちらかというと(当たり前ですが)NESTs側からの議論で「なぜそのような状況に陥っているのか」という分析が少ないように思いました。日本のALTの状況からすると、部分的jにしか授業を担当できないとか授業が逆に丸投げされてしまうのは、学校に常駐せず一人のALTが多くの学校を掛け持ちで担当しているという外的な要因に寄るところです(このことについて講演の後で講師の方と話す機会がありました)。

結論として、NESTs側からはmulti-linguistic, multi-cultural understanding が必要であり選考に当たってもスキルや能力ベースにすべきであるというのは全く納得できるところでした。ただ問題なのはこれから日本においても小学校からの英語教育の本格的開始を控え多くのNESTを採用しようとする機運の中でこのような正当な方法の選考が本当になされるのかという点は気になるところです。

改めてNESTの条件は?LETの条件は何か? と考えるいい刺激を与えてもらったように思います。

(2018.5.30)

★今回の教訓:白人・北米信仰が最も強いのが日本だろう。厄介なのはそれが英語を学ぶ強い動機になってしまっているところ。その部分を取り払っても日本人は英語を学び続けようと思うだろうか。少なくとも変な憧憬はなくなるだろう。それはいいことかもしれない。

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